ここでは、高校化学における「酸と塩基」の分野の解説をしていきます

  今回の内容は、中和滴定の原理及び器具とその

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【目次】

  • 中和滴定の原理
  • 滴定に使われる器具
  • 共洗い
  • (発展)共洗いをしなければならない理由と、してはいけない理由

 

【中和滴定の原理】

 中和滴定は最初のページで述べた通り、「未知濃度の溶液の濃度を求める」操作になります。

そのために使われる原理は以下の通りです。

 中和点では

    から出されたH⁺物質量(mol) = 塩基から出されたOH⁻物質量(mol)

 

 滴定では、この中和点を目指していくというのが大前提となります。

具体例を見ると分かりやすいです。

ex)塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の滴定

 0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を30mLコニカルビーカーに採取し、未知濃度の塩酸を中和滴定したところ、終点までに30mLを要した。

 塩酸濃度をC(mol/L)とすると。この場合、中和点までに用いられたH⁺の物質量は、C(mol/L)×0.03(L)=0.03C(mol)となります。

 また、中和点までに用いられたOH⁻の物質量は、0.1(mol/L)×0.03(L)=0.003(mol)となります。

中和点において、上の原理が成り立つため、0.03C=0.003という式が成り立ちます。

よって、これを解くとC=0.1(mol/L)と求めることが出来ます。

 

 どうでしょうか?酸から出たH⁺の物質量と塩基から出たOH⁻の物質量を求め、それを等号で結び解く事で濃度が求まるという事が実感できたかなと思います。

 ※ちなみにこれは中和の計算の中でおそらく最も簡単なレベルの問題であり、これが理解できないと他の問題は厳しいと言って差し支えないでしょう。

 中和滴定の計算はこれだけです。以降難しめの問題もありますが、全てこのH⁺の物質量OH⁻の物質量で計算が可能です。

 難しい問題としてアンモニアの逆滴定という問題もありますが、この問題でも同様の考えを用いるとかなり簡単に解くことが出来ます。

次のページで中和滴定の問題を詳しく扱い、中和滴定の原理の解説がメインなので今回はここまでにとどめておきます。 

※補足(重要)

 今回、反応ではNaOHとHClが使われているため、反応式はNaOH + HCl → NaCl + H₂Oとなります。この反応式が所謂「中和反応式」であり、NaCl(塩)H₂Oが生成している事が分かります。このように、中和反応というのは、必ず「塩」「水」が生成します。入試(特に共通テスト)でたまに「反応式から反応の種類を見分けよ」という問題が出されるのですが、その際にこの「水」が生成しているというのが中和を見分ける重要なポイントになってきます。

 

【滴定に使われる器具】

 よく出てくるのは、「ビュレット」「ホールピペット」「メスフラスコ」「コニカルビーカー」の4つです。

ビュレットは、滴定操作において、溶液を滴下するための器具です。目盛りがついてあり、正確な滴下容積が分かります

ホールピペットは、溶液を正確に量り取るための器具です。

メスフラスコは、正確な濃度の溶液(標準溶液)を調製するための器具です。標線がついているため、正確な濃度の溶液を作ることが出来ます

コニカルビーカーは、中和滴定において、ビュレットの受け皿であり、滴定に使う反応容器でもあります。

 この器具の名前と用途を問題で問われることはもちろんあるのですが、それ以上に入試でも良く問われるのは洗浄方法乾燥方法です。洗浄については次の項で詳しく説明します。

  なお、ビュレットとメスフラスコとホールピペットには、「正確な」と付いているのが分かるかと思います。これはつまり、器具の形が少しでも変形すると多大な影響を受けてしまうという事です。

  つまり、洗った際、乾燥で絶対に加熱をしてはいけない、という事になります。一度でも変形してしまうと二度と元には戻らず、精度がくるってしまう為です。

対してコニカルビーカーは滴定の反応容器としての役目だけであり、正確な体積は既にホールピペットで測れているため、変形しても影響は大きくありません(無論、しない方が好ましい)

 

共洗い

 非常に入試などでもよく出てくるトピックになります。というのも、中和滴定の実験をする際、共洗いという操作は多く行うためです。

では、その共洗いというのは一体どういうものなのか、というと

  【共洗いとは】

    その器具を、使う溶液同じ溶液で洗浄する

 

  普通、洗浄と聞くと、実験後に器具を洗うというイメージがあるかもしれませんが、ここで扱う共洗いは実験前の準備段階で行うものになります。

共洗いをする器具は、ビュレットホールピペットです。

1つ注意点があり、これらを使用前に洗浄する際、「共洗いをしてもいい」ではなく、「共洗いしなければならない」「水を使ってはいけない」という点に気を付けてください。(詳しくは次項で後述)

 さらに、コニカルビーカー、メスフラスコは逆に「共洗いをしてはいけない」事も覚えておいてください。純水で洗う必要があります。「共洗いしなくてもいい」ではないので注意してください。

 覚え方としては、「細長い物は共洗いしないといけない」とすると覚えやすいかもしれません。

 

(発展)共洗いをしなければならない理由と、してはいけない理由

 ここでは、先で述べた共洗いについて、ビュレットとホールピペットが共洗いしなければならず、水を使ってはいけない理由と、コニカルビーカーとメスフラスコが共洗いしてはいけない理由について述べておきます。発展的な内容であり、ここまでは入試にもあまり出ないので、初学者や中和計算がまだ苦手な方は読まなくても大丈夫です。どうしても納得いかない人だけ見てください。

〇ビュレットとホールピペットを共洗いしなければならない理由
 そもそも、使う器具は、いくら洗浄されていたとしても、微量の不純物が付着しています。もし、これらが滴定の際混入していると、結果が変動してしまう可能性があります。

 極端な例を考えると分かりやすいです。30mLビュレットに、既に不純物が液体として29mL入っていたとします(そんなことは勿論あり得ないけど、分かりやすくするための仮定です)。その中に、ある未知濃度C(mol/L)の溶液Aを入れますが、当然1mLしか入りません

では、その出来上がった30mL溶液を滴定に使うとどうなるでしょうか?

例えば、滴定に10mLを要したとしましょう。本来はAがC(mol/L)×0.01(L)=0.01C(mol)あるはずですが、実際には(濃度がビュレット内で均一になっていたとし、不純物が化学反応を起こさなかった場合)、0.01C×0.033=0.0033(mol)しかない事になります。しかも、その不純物が余計な化学反応を起こしてしまうと更に複雑に絡み合い、全く予想外の結果すら生み兼ねません。

上で述べたように、中和ではとにかくH⁺の物質量=OH⁻の物質量が大原則なので、不純物が多いと実際の物質量より小さく見積もってしまう事になり、結果に悪影響を及ぼします。

そのため、使う溶液で共洗いをする事により(普通は3~5回ほど行います)、不純物をできるだけ取り除きつつ、使う溶液と同じ溶液なので、新たな不純物が混ざる心配がより減るため、「共洗いをしなければならない」となります。

 

〇ビュレットとホールピペットを水で洗ってはいけない理由

 先ほどの話と考え方は同じです。30mLビュレット内に水が29mLあったら、ビュレット内の物質量が低下してしまい、計算が合わなくなるためです。

 

〇コニカルビーカーとメスフラスコを共洗いしてはいけない理由(純水で洗わなければいけない理由)

 メスフラスコは正確な濃度の標準溶液を作るための器具です。先に目的物質をいれ、その後に純水を標線まで入れます。そのため、どちらにしろ純水が入るため純水で洗っても問題ないという事です。(但し、使う溶液を入れた際に標線を越すほど純水が入っていたら無論ダメです。普通はそんな事はまずないけど)

では逆に共洗いをしてしまうとどうなるかというと、もし仮にフラスコ内に1mL付着していた場合、そこに10mL正確に滴下したとしても全量は11mLになってしまい、誤差が生じてしまう為、共洗いをしてはいけません。 

  コニカルビーカーは滴定の反応容器に使われる器具です。これを水で洗っていいの?と最初思うかもしれませんが、極端な例を考えましょう。

  巨大なコニカルビーカーを考え、そこに既に水が1L入っていたとします。では、そこに0.1mol/L標準溶液Aを30mL入れたとしましょう。当然、ビーカー内の濃度は0.00291mol/Lと大幅に低下してしまいますが、中和は「物質量」が重要なのであって、濃度が下がったところで、ビーカーの外に漏れださなければ別に問題はありません。

  というのも、濃度が大幅に下がったところで、純水しか入っていないのでAはずっと0.003molあるという事に変わりはありません。なので、このまま中和滴定を進めたところで、中和点では、純水が混入していない場合と同じ結果になります。

(0.1mol/L×0.03L=0.003molですし、0.00291mol/L×1.03L=0.003molです。)

  つまるところ、純水が混入してても別に結果に影響が出ない為、純水で洗っても問題ないという訳です。(勿論、外に漏れ出さない事、純水以外に不純物が無いのが前提です)

  では逆に、コニカルビーカーを共洗いするとどうなるでしょうか?例えばここにAが1ml混入していると、Aは全部で31mLになるため、物質量は0.0031molとなり、物質量が変わってしまいます。そのため中和の計算に誤差が生じるので共洗いをしてはいけないという事になります。

 

難しい事を書きましたが、要は物質量が変化しなければ問題無し、という事です。それほどまでに中和の原理である、H⁺の物質量OH⁻の物質量が大事という事が分かるかと思います。

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